国立美術館で興ずる

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毎週火曜日の夜、Centre pompidouでは何かしらのパーティーが開かれる。
つまり、一個人や一法人が国立美術館を一晩借り切って、宴に興ずるのだ。
館内にはケータリングの食べ物とシャンペンを含めた各種飲み物が並ぶ。
美術館で行われる最大の利点は、パーティーエリアに隣接している展示室が開放されて
自由にアートが鑑賞できるということ。
フランスは「アートと人々の距離が近い国」と認識しているけど、
これは想像を超えた近さ。
10日はGaz de France(フランスガス公社) のパーティーで、
それこそ全館使われていた、写真は普段のpompidouとパーティー時のpompidou。
「楽むこと」より「問題ないこと」を好む日本ではありえない。

金曜日はC+Aの小嶋さんと赤松さんがいらっしゃった。
小嶋さんたちが、伊東豊雄さんのHospital Cognacq-Jay(コニャック・ジェイ病院)
現場に行くと言うので、僕もこれに便乗してお邪魔しました。
設計競技から関わり、現在、現場管理をしている高塚さんに案内していただくことが出来た。
外装はガラスによる無機質なものだが、一般開放される予定の道を抜け
敷地の庭に入ると非常に広々とした庭が広がっていた。
隣地の庭を借景して、大きな庭を作っている。
そしてそこには単一敷地だけでは得られない「大きな空」が広がっていた。
この庭が「病院という閉鎖社会に生きる患者」と「一般の人=社会」の交差点になるらしい。
病室からの視線や外部からの見え方に至るまで、「表面=境界」の設定が非常に精密になされていた。
あと、この建築は正面のない建築だということ。全てが正面であり全てが裏であるようなかんじ。
写真を何十枚も見て、やっと理解できる建築だろう。
オブジェとしての建築から、随分と遠い場所にある建築だ。
その後、昼食。
小嶋さん、赤松さんと高塚さんの「海外で現場をどのようにコントロールするのか?」と
いうお話は非常に興味深かった。

日曜日は黒田アキさんのアトリエへ。
ある企画のための組織立ち上げ会(?)をノンアルコールで行う。
と言うか組織立ち上げのための事務作業。
いきなり二月末の締め切りをもらいました。

何はともあれ、走ります!!!

Art / 美術, Dialy / 日常, Paris / パリ | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 1 16, 2006 8:36 | Comments (2) | TrackBack (0)

貴族の家

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■金曜日の夜、
友人に誘われてFETE(ホームパーティー)に行った。
場所はパリ16区の高級住宅街。
気軽に行った僕は唖然。
ものすごい豪邸に、オシャレした男女が150人くらい集って、
飲んで、歌って、喋っていた。
圧倒的な雰囲気に頭を掻き回されつつ、僕も喋って飲んで朝4時頃に帰宅。
後で聞いてみると、主催者の中に貴族がいて、その方の家で行われそうです。
貴重な体験だったのに、写真一枚取れなかったことが悔やまれる。

FETEでは、建築・デザイン関係以外の人ともお話させていただいた。
そこで、一般の人たちが建築や都市の「近代化に伴う場所性の消滅」というような主題に対して
自分の意見をしっかり持っていることに再度関心。
さすが、歴史を積み重ねた都市や建築の中で生きるパリの人々。
空間に対する意識が一般の人々に、高いレベルで浸透している。

戦後、大部分が白紙の状態から作られた現在の東京は
物理的に「歴史を積み重ねた」と言うには難しい状況。
歴史や文化の断絶など、様々な背景も違うから直接比較はできない。
でも少なからず「物が残ってるかいなか」と言うことは
意識に大きな違いを与えている。
現在、マスメディアによる「流行」というかたちで「空間の意識」が浸透しつつありますが
この過渡期の向こう側に、成熟した日本人の意識が開ければ良いなと思っています。

■土曜
Centre pompidou前にチョーク画家を発見しました。
荒いアスファルトの中から、人が浮かび上がってくるかのようです。
美術館の中でキャンバスにしっかり据えられている絵も良いけど
町の中に溶解している状態の絵と言うのも素晴らしい。
構えていないときに、突然後ろからプスとさされたような感じで
心に入ってきた。

Art / 美術, Dialy / 日常, Paris / パリ | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 9 26, 2005 7:36 | TrackBack (0)

安藤案も建設中止

ここで僕がプロジェクトの行く末を心配するには訳がある。
その理由として、DES HALLESの設計競技のゴタゴタに加え
安藤忠雄さんが設計競技で勝った美術館を含む
Seguin島の再開発自体が
ここ
にあるように簡単に中止になってしまったことが挙げられる。

Seguin島の件は、フランスの大富豪PINAULT(PRINTEMPSFNACの所有者)と
Boulogne市との方向性の不一致が原因だが、
フランス国内におけるの様々なレベルでのオーガナイズの悪さを
非常に良く(も悪くも)象徴している。

Architecture Space / 建築, Art / 美術, News / 新着情報, Paris / パリ, Urbanism_City / 都市 | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 5 30, 2005 9:36 | TrackBack (1)

BECHERの写真

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・18日
毎年11月の第三木曜日に解禁されるワイン・ボジョレーヌーボー(Beaujolais nouveau)を飲む。
日本のように大騒ぎにはなっていないが、レストランや惣菜屋に行くと
店員さんがさりげなく勧めてくれる。
僕も平日の昼食にこれをさりげなく飲む。
このさりげなさ。さすが、ワイン文化が充実している。

日本でのボジョレーやスターバックスの熱狂は、
ワイン文化やカフェ文化の成熟度の違いを表している気がする。
それを証拠に、元々カフェ文化があるパリでは、スターバックが入り込む余地が無く
観光客エリアに二店舗しかない。

・20日
Center pompiduで行われているBERND ET HILLA BECHER展へ。
時代、国籍、文脈が異なる一つの『工業建築・設備』を同じ視点で撮影し、
即物的な『もの』でさえも、それを取り囲む時代や状況によって
様々に変化するということをあらわにするタイポロジー(Typology)。
BERND ET HILLA BECHERはこの技法で有名なドイツ人写真家。

今回の展覧会では下記の10作品が展示されていた。
給水塔(Chateaux d’ eau)
冷却塔(Tours de refrigeration)
ガスタンク(Gazometres)
縦坑(Chevalements)
加工工場(Usine de traitement)
砂利倉庫(Gravieres)
炉(Fours a chaux)
穀物サイロ(Silos a cereales)
石炭サイロ(Silos a charbon)
溶鉱炉(Hauts fourneaux)
パイプ群の詳細(Details)
生産工場(Halles de production)

光が均等に当たる曇りを選んで撮影された写真群からは、
正面のアングルとも相まって
グラフィックデザインのような二次元的印象を強く受けた。
被写体は形態が似ているのにも関わらず、
そこに張り付く「素材」や「スケール」が様々に変化しているので
まるで3Dグラフィックのマッピングスタディーを見ているよう。

「特定の素材が連続していく」という『工業建築・設備』に特有の『表面』構成は、
一般的な「建築」のデザインに適用できる十分な魅力を持っている。
(※写真は展覧会カタログの写真)

Architecture Space / 建築, Art / 美術, Event Lecture / イベント, Paris / パリ | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 11 29, 2004 0:56 | Comments (3) | TrackBack (0)

「紙」と「お寿司」と「浮世絵」と

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・ 10日
坂茂パリ事務所の岡田君に誘われて坂事務所見学へ。
Center pompiduの最上階にはjakob+macfarlane設計のレストラン「George」が。
それを横目に進んでいくと仮設テントとして設けられた事務所が見えてくる。
建物は坂茂さんの「ブランドロゴ」となった紙管による構造。
断熱材に薄い発泡スチロールを使っていて、夜になると光が透けてとてもきれい。
「設置場所」も、「日本人による紙建築」であるということも含め
この建築自体が展示物と化していました。
さすがポンピドーセンター。色々なことがかなり戦略的です。

・ 14日
事務所のみんなを招待して、手巻き寿司パーティー。
早朝に市に買出しに行った甲斐あってかなり好評。

・ 15日
Galeries Nationales du Grand Palaisで行われている「Images du monde flottant」展へ。
Images du monde flottantとは、絵・世・浮。つまり日本の浮世絵の展示です。
フランスで見る日本の展示は何か不思議。
展示よりもフランス人の反応に興味が向いてしまう。

すごい量の浮世絵をまとめて見るのは今回が初めて。
西洋絵画は、あるテーマ(例えば「受胎告知」)に沿って全ての要素が構成されている。
それは絵画の中に一つの(「時間」とも呼べる)物語が存在している。
一方、(特に多人数が描かれた)浮世絵の画面では、ある者は歌い・踊り、ある者は決闘し
そしてあるものは寝ていたりする。
つまり、画面の様々な部分にそれぞれの物語(「時間」)が流れている。

表現方法としては、物の大小関係・位置関係、記号的表現など、
やはり西洋的絵画とはかなり違ていることを再々確認。
とくに、勝川春潮が描いた「EDOcho dans quartier de YOSHIKAWA(江戸よしかわ地区/正式名称不明)」
が興味深い。
道沿った幾つかの建物があって、全ての建物はそれぞれの消失点をもった遠近法で、
道をまたぐ門はアクソノメトリックで描かれている。
先日見た歌舞伎の舞台装置にもった感想と同じで、遠近感が曖昧に設定されているから
見かたによって遠近関係がかなり変化してくる。
無自覚にこの操作を行っているんだろうけど、ホルバインの絵よりやってることが面白い。

そういえば浮世絵も歌舞伎も江戸時代に起源を持つものですね。
この表現は時代によって共通に埋め込まれた表現形式だったのかも知れない。

写真は自宅近くで建設が続くJean Nouvel設計のmusee du quai branly
散歩中に撮影したもの。
壁面の植物が異様で魅力的。

Architecture Space / 建築, Art / 美術, Event Lecture / イベント, Paris / パリ | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 11 14, 2004 23:10 | Comments (2) | TrackBack (0)

坂口恭平さんとお会いする

美術家の坂口恭平さんとお会いする。
坂口さん自体自分の職業が何であるのかわからないというので
とりあえず「美術家」と呼ばせていただくことにする。

彼の代表作は
東京の浮浪者の家をガンガン撮影し続けた写真集「0円ハウス」
貯水タンクの中で生活する彼自身を撮影し続けた「貯水タンクに棲む」
などがある。

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彼は早稲田大学建築学科石山研究室の卒業生なのですが
高校時代から建築に対する情熱が物凄く、石山修武に会うために
早稲田に入ったという人物。

お話をしていて「建築を愛する」と言う情熱を物凄く感じました。

現在、彼は「建築ど真ん中」というよりも、「建築の周縁」の活動を行っている。
建築を愛しすぎるがゆえに、その中心に触れることに対する恐怖が
彼を「建築の周縁」へと向かわせている気がします。
彼は否定していましたが。

そんな彼もいつか建築を作りたいらしい。
そのお手伝いができれば、大きな刺激を与えてもらえる気がしました。

建築のどのような「周縁」をついてくるのか?
次の作品が楽しみです。

Art / 美術, Paris / パリ | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 11 1, 2004 1:30 | TrackBack (0)

「東京」と「パリ」を往復した一日

■僕の自宅で夕食・兼映画鑑賞会。

映画は「LOST IN TRANSLATION」。
Sofia Coppolaの最新作で、日本ではまだ映画館で公開しているらしい。

この映画は僕の中で特別の映画作品である。
なぜかと言うと、事務所の仲間や海外で出会った人々が
僕が「東京」から来たというと必ず「ダイスケは見たかとがあるか?」聞かれる映画だからだ。

「東京」に行ったことがある無に関わらず、彼らにとっては
この映画の中の「TOKYO」が「東京」であるようだ。

見ていて思ったのが、Sofia Coppolaが大都市・「東京」の「孤独感」しっかり見抜いていること。
−女性主人公が大都会を見下ろしながら涙する孤独感。
−「トンチンカンな通訳」によって、話し合っているのに、本質的には分かり合えていない会話。
−ホテル(海外)では声を掛けられるのに、街(東京)に出ると誰にも気づかれない匿名性。
など。

これらは、普段「東京」に暮らしている僕らの胸に、「ふっ」とした時に染み出てくる感覚だ。

Sofiaは東京が好きで、年に何度も「東京」に来るらしいが、
彼女は東京の暮らしが持つ「表」と「裏」を理解しながら「東京」を「愛している」気がする。
「恋している」という感覚のほうが近いのかもしれない。

各シーンで、少々大げさな表現もあるが、外国に暮らしてみると
外国人の心の中に切り取られている「TOKYO」を生のままで表現するとこうなると思う。

僕はこの映画で、アルファベットの「TOKYO」を眺めながら
漢字の「東京」に里帰りすることが出来た。

映像としての「東京」ではなく、心象としての「東京」を。


■「東京」に里帰りした後は、PARISで開催された「NUIT BLANCHE」へ。

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パリ市庁舎、オペラ座、国立図書館、ノートルダム、ポンピドーセンターなど、
パリを代表する施設郡が一晩中開放され、様々なイベントが開催されるというもの。

一番面白かったのが、パリの老舗百貨店「Printemps」で行われた「Creme de Singe」。
いつもと変わらず電気が煌々と点灯し、エスカレータが動き、商品が並ぶ店内。
ただ一つだけ違うのは、「人間」の変わりに二匹の「さる」店内を歩き回っていること。

彼らは各階をさまよい、好きな商品を手にし、たまに休憩する。
それをショーウィンドウに設置された数台のカメラで眺めるというもの。
愛らしい「さるたち」の行動に、思わず笑ってしまう。

彼らの行動は服を脱いだ人間のように、「買い物をする人間」の動き再表現している。
しかし、これを撮影しているのは店内の監視カメラであるということに、ある時気づく。

どこに居ても映し出される「サル」の映像は、
「買い物をする人間」が常に監視されている事実を再表現しているともいえる。

ふっと笑った後に、少し背中が寒くなる作品だった。

「NUIT BLANCHE」全体の感想としては、全てのイベントがまだリンクしていないという状態。
あと5年続いたら成熟するのかなと思う。

それにしても、パリは都市全体の自覚的な演出が非常に上手い。
東京の自然発生的な魅力も僕にとっては十分に心地良いのだが、
組織的な都市の魅力を志向するパリの意識には頭が下がる。

LOST IN TRANSLATION」と「NUIT BLANCHE」。
「東京」と「パリ」を往復した一日でした。

Art / 美術, Event Lecture / イベント, Paris / パリ, Urbanism_City / 都市, 映画・演劇 | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 10 11, 2004 7:51 | TrackBack (0)

武山まどか展へ

■パリのCite international des artsで開催されていた、武山まどか展へ。

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武山さんは、千切り絵の手法で大画面を構成するコラージュアーティスト。
雑誌の切抜きを「色」別に分類し、「方向性」を持った要素として扱う。
それをちょうどスーラの絵のように色として貼り付けながら、
「方向性」の組み合わせで気象予報図のような様相を作り出します。

製作時に「色」と「方向性」しか持っていなかった要素が
鑑賞時には、雑誌の中で本来持っていた、唇や彫刻、魚といった、
「意味」を回復するので、シュールレアリスムのような印象を受ける。

この画面サイズがまた非常に大きくて、
作品の「うねり」が、置かれた空間にまで「うねり」を与えているような感じ。
非常に心地よい。
自分の絵画鑑賞の経験を思い返すと、どうやら僕は大きな絵画が好きなようだ。

Art / 美術 | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 10 11, 2004 7:42 | TrackBack (0)

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