名残のある風景

市電跡 大宮通り七条下ル
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「建築における日本的な風景をつくる制度は開発可能なのか」
ーPM・CM方式を通しての考察ー

 PM(プロジェクト・マネジメント)は、もともと米軍が第二次世界大戦で、マンハッタン計画という原子爆弾の開発プロジェクトを切り盛りする時に、「最小のコストと時間で高性能」な原爆を作るために、開発した大きなプロジェクトの推進管理手法という発祥を持つ。CM(コンストラクション・マネジメント)もまたアメリカで確立したプロジェクト実施方式だ。30年前アメリカでは、プロジェクトが大規模化、複雑化するのに伴い、工事遅延、予算超過が乱発し、それらを防止する目的で、マネジメントを専門に行う主体として、設けたのが始まり。
 しかし、現在、それらの方式が持つ意味は、歴史的なコンテクストは違えど、事業の推進を得意とするPM、工事の切り回しが得意なCM(施設の管理が得意なFM)。と言った、それぞれの方式が持つ発想の着眼が派生し、建築全体のマネージメントへ発展したものになっている。どの方式も、施主と一体となって良い建築を目指すという、表だった目標は同じものの、ネーミングが似ていることもあり、差異を認識しづらい。施主(発注者)が自分の希望する建築の性格に合わせて、それらのマネージャーを選択する。と、いうのも混乱をまねく原因になると思われる。日本における大型のプロジェクトの推進手法は、これから開発していかなくてはならない。というのが、今日抱える論点である。
 建築におけるCMやPMと言った、日本的な管理方式のスキルを育てるにあたり、社会的な命題としては、魅力的な日本の風景をつくる。と言うことがそれに、値するのではないだろうか。都市計画や、アーバンデザインという概念は、全世紀において、建築家が放棄せざるえなかった分野であると言ってよい。何一つ実現せず、「中銀カプセルタワー」のような派生した建築や、「横浜市の都市デザイン室」というような制度が形骸化して残っているだけで、社会に対する訴求力は、現時点では失われている。
 魅力的な都市を開発していくためには、建築家が関わらなくても、ほとんどの建築が建っているという現実の中、それ以外の9割以上の建築を見捨てていては、一向に日本が持つ風景は良くならない。その指標たるものとして、ヨーロッパのような歴史的な象徴性をセレブレートする風土を受け入れようにも、地震や戦争によって都市をリセットする歴史を背負う日本において、その概念のみによって具体的なアイデアを生むことは、難しい。また、湿度の高い日本において、300年も400年も持つような建築を、作ることは現実的には不可能で、再構築していく中で、都市が持つイメージを培って行く必要がある。また、アメリカのような建築が引き起こす問題すべてを、訴訟に持ち込む風土から生まれたCMやPMを全うに受けていては、それらが日本における風景を創造するにあたり、頭の痛い制度になりかねない。
 縦割り行政の性格上、都市の骨格(ファシリティ)である河川、高速、公園、海岸などは、デザインという価値が存在しなかった土木という分野が責任を負ってきた。もちろん、壊れない骨格を作るという理念に基づき、国土を作るという責務は全うしている。しかし、それのみで都市や国土が覆われており、その上に建つように見えてしまう、建築単体では、社会に対してクリティカルな視点が問えなくなってきていると言っても過言ではない。
 では、どこに「日本の風景をつくる」可能性があるのだろうか。それは、誰もみたことがない地平であり、非常に可能性がある方法論として、今世紀確立していく大きな目標になると考えている。継続して、建築家が建築を建てることも必要だが、もうすこし手前で、従前なる制度をデザインする。というスタンスで再構築も必要だと思う。そこで、ゼネコンが培ってきた技術や組織力、行政への働きかけといったスキルを、建築、土木、行政と言ったフレームを横断し、PMやCMの導入という口実を利用して、開発可能な人材と、社会を作ろうとしている。それらが、どこへシフトしていくかは注意深く見ていく必要があると思うが、建築家が作る建築がただの、ぼやきに。制度がこれ以上の創意の弊害にならぬよう。建築に携わる人たちで、社会に働きかけて行かなくてはならないのは確かだと思う。
 最後に、論点を分かりやすくするために、建築家とゼネコンという二項対立の構図をひいたわけだが、建築家が都市を創造することがあるべきであり、ゼネコンがマンパワーのアイデアを世に問う姿勢を持ち直すべきだと思う。僕は、風景をつくる。都市をデザインする。街をつくる。という事に興味が沸いている。

このエントリーは、
「建築マネジメントの実践p20〜47 日刊建設工業新聞 小菅哲」
「国土交通省 マネジメント技術活用方式試行評価研究会に関するHP」
建築家 塚本由晴、リノベーションについて語る。」を参照しています。

遺構, 建築 | at January 27, 2005 18:53


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